
遥か昔、海の底に「記憶の遺跡」と呼ばれる場所があった。
その中心には、光の輪が浮かぶ神殿があり、無数の知識が「泡」となって漂っていた。
そこに住むのは、巨大な賢亀“エルノ”と、好奇心のままに泳ぐ海龍“シェラ”。
ある日、エルノは一冊の古代書を拾った。タイトルは『「学力」の経済学』。

「感情よりも根拠で動いたほうが、子どもにとってええらしい」
そうつぶやくエルノに、シェラはヒレをくるりと回して言った。

「根拠って何よ?子どもは自由が一番でしょ?」
対照的な育て方
エルノはその日から、遺跡の中に「エビデンスに基づいた学びの場」をつくった。 子ガメたちは朝に小さな目標を立て、達成度を星の泡で記録する。褒めるときも、努力や行動に着目して評価した。
一方、シェラの子どもたちは、自由に泳ぎ回る日々。笑って、怒って、泣いて、また笑って。 「失敗しても、それが自然よ。自由が一番よ」と、シェラは翼を広げて子たちを包んでいた。
やがて、二つの道が交わる
ある日、海流が狂い、光の柱が消えた。
海の森を探検していたシェラの子どもたちは、方向感覚を失い、浮かぶことさえままならなくなる。
そこへ現れたのは、エルノの子ガメたち。

「大丈夫。この星の泡を辿ってきて」
海の底に漂う光の道を、子どもたちはおそるおそる、でも確かに進んでいく。
――無事に帰ってきた子どもたちみて、シェラがぽつりと尋ねた。
「ねえ、エルノ。私は“心”で育てた。あんたは“論理”で導いた。やっぱりあんたが正しかったみたいね。」
エルノは少し考えてから、静かに答えた。
「自由な心で動けば、迷うこともある。けど、心があるからこそ歩き出せる。――そう思わんか?」
数日後
ゆっくりと、シェラは本を開いた。
そのページを、エルノがそっと横から覗きこむ。

今日から、ふたりで育てていくことにした。
心と論理。
その二つが重なったとき、
学びは、静かな海の底にそっと芽吹いた。
【あとがき】
「子育てって、どうしたら正解なんやろ?」
そんな問いを抱えてる人、多いと思うねん。
愛情だけでも不安やし、かといって理屈ばっかでも窮屈。
この話の元ネタになったのは、📘**『「学力」の経済学』**という本。
子どもにとって本当に効果のある教育って何か?
愛情も大事、でも**「エビデンス(根拠)」のある関わり方**も知っておこう、
そんな視点で書かれた一冊やねん。

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