ここは大手企業・星瀬商事の営業企画部。社内でも特に忙しいと評判のこの部署で、リーダーとしてチームをまとめるのが狩峰(かりみね)だ。
狩峰は、日々の業務をいかに効率よく回すかだけを考えている。
部下たちに容赦なく仕事を振り分けていく。
しかし、彼の采配の裏にある因果の糸が、どのように巡り巡っていくのか──。
この男にどんな因果応報が降りかかるのか、見ていくことにしよう。
「おい、お前こんなこともわかんねえのかよ。」
狩峰はそう言って、新人のデスクを軽く叩いた。
「す、すみません……。」
新人は慌ててパソコンに目を落とすが、狩峰はそれを見下ろしながら呆れたように肩をすくめる。
新人は顔をこわばらせながらも、何も言えずに作業を続ける。
その横で、狩峰は別の部下のデスクへ向かった。
「おい、お前これやっとけ。」
「え、でも自分のタスクがまだ……」
「わかってる。その仕事は納期まで余裕があるだろ。先にこっちを片付けろ。」
押し付けられた部下は渋々資料を受け取りながら、小さくため息をつく。
さらに、狩峰は別の席に目を向けた。
「西村、お前もだ。来週のプレゼン資料、今日中に見直してまとめておけ。」
「えっ!? でも、今月の売上分析もまだ……」
「どっちが優先か考えろ。売上分析は明後日までに出せば間に合う。こっちを先にやれ。」
西村は納得がいかないような顔をしながらも、「……わかりました」としぶしぶ従った。
狩峰はそんな様子を見ても気にすることなく、自分のデスクに戻るとコーヒーを一口飲んだ。
「ったく、こっちだって忙しいんだよ。」
そう呟きながら、パソコンに目を落とす。とはいえ、彼のデスクには他の社員ほどの書類の山もなく、どちらかというと余裕すらあるように見える。
狩峰は新人の方をチラリと見た。
「……ったく。」
小さく舌打ちをしながら、狩峰は画面を見つめ、再びタイピングを始める。
数分後、プリンターが低い音を立てて動き出した。狩峰は印刷された資料を手に取り、それを無造作に持ちながら新人のデスクへと向かった。
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