因果応報 第1話 仕事を押し付ける男

ここは大手企業・星瀬商事の営業企画部。社内でも特に忙しいと評判のこの部署で、リーダーとしてチームをまとめるのが狩峰(かりみね)だ。

狩峰は、日々の業務をいかに効率よく回すかだけを考えている。

部下たちに容赦なく仕事を振り分けていく。

しかし、彼の采配の裏にある因果の糸が、どのように巡り巡っていくのか──。

この男にどんな因果応報が降りかかるのか、見ていくことにしよう。

「おい、お前こんなこともわかんねえのかよ。」

狩峰はそう言って、新人のデスクを軽く叩いた。

「す、すみません……。」

新人は慌ててパソコンに目を落とすが、狩峰はそれを見下ろしながら呆れたように肩をすくめる。

新人は顔をこわばらせながらも、何も言えずに作業を続ける。

その横で、狩峰は別の部下のデスクへ向かった。

「おい、お前これやっとけ。」

「え、でも自分のタスクがまだ……」

「わかってる。その仕事は納期まで余裕があるだろ。先にこっちを片付けろ。」

押し付けられた部下は渋々資料を受け取りながら、小さくため息をつく。

さらに、狩峰は別の席に目を向けた。

「西村、お前もだ。来週のプレゼン資料、今日中に見直してまとめておけ。」

「えっ!? でも、今月の売上分析もまだ……」

「どっちが優先か考えろ。売上分析は明後日までに出せば間に合う。こっちを先にやれ。」

西村は納得がいかないような顔をしながらも、「……わかりました」としぶしぶ従った。

狩峰はそんな様子を見ても気にすることなく、自分のデスクに戻るとコーヒーを一口飲んだ。

「ったく、こっちだって忙しいんだよ。」

そう呟きながら、パソコンに目を落とす。とはいえ、彼のデスクには他の社員ほどの書類の山もなく、どちらかというと余裕すらあるように見える。

狩峰は新人の方をチラリと見た。

「……ったく。」

小さく舌打ちをしながら、狩峰は画面を見つめ、再びタイピングを始める。

数分後、プリンターが低い音を立てて動き出した。狩峰は印刷された資料を手に取り、それを無造作に持ちながら新人のデスクへと向かった。

第2話

コメント

タイトルとURLをコピーしました